写真とその周辺

写真とその周辺/DCS Pro14n 次にくるもの

先のフォトキナなどで発表され、発売が待たれていたデジタル一眼レフの販売が2003年5月に開始された。約1400万画素フルサイズCMOSを搭載したKodak DCS Pro14nである。この時点では35mmシステムのレンズが使える最も画素数の多いカメラだ。細かな話は省くとして、このカメラはCMOSデバイス前面のローパスフィルターやマイクロレンズを持たない。その分、解像度的にメリットがある。もちろんデメリットもある。モアレや偽色をどううまく処理できるかである。

テクノロジーの細部の話はここでは忘れて、早々この写真の道具を試してみた。もともとどちらかといえばコマーシャルフォトやスタジオでの撮影目的の傾向があると思われるこのカメラだが、私の分野はフィールドでの風景写真、ネイチャーフォトである。35mmフィルムカメラを越えブローニーに迫るとの期待を持ってのテスト撮影であり、求めるものは、DCS Pro14n がフィールドでどの程度使い物になるかの感触を得ることである。

DCS Pro14n

画像

左の写真はどこででも見られるヒルガオの花である。解像度の雰囲気を見るために2個の花を入れて撮影してみた。レンズは ニコンAFマイクロニッコール105mm F2.8 D である。f値は8.0、シャッター1/180sec、である。 明るい曇りの天気とはいえ少し風で揺れていたためかなりブレが出ていると思ったが、撮影画像を100%で表示してみて優秀だと思った。下の写真は2つの花のうち下のものの一部を100% 表示させたもの。一見するとブローニーにも迫る解像度を感じる雰囲気だ。

これまでの1年間は同じレンズをニコンD100につけて使用してきた。DCS Pro14nでは600万画素の2倍を越える1400万画素ということもあり、これまでとはあきらかに違う画像の緻密さである。

100%画像

600万画素で大きな風景や細かく複雑なものを撮影すると、ほとんど35mmフィルムカメラに比べても見劣りする結果しか得られない。明らかに画素数が少なすぎる。3000 x 2000 ピクセルの画像は 300dpi の密度でプリントして基本的にはほぼA4サイズである。リサイズしてA3まで伸ばしても比較的写真的ではあるが、複雑で細かな被写体のものでは無理がある。

1400万画素ではどうだろうか。A3やA3ノビは楽にこなせる。A3ノビはほぼ半切(16 x 20インチ)に近いサイズである。元画像のピントやブレに問題なければA2程度まで可能そうだ。ここまでくればかなり実用的である。

DCS Pro14n は1400万画素 4500 x 3000 ピクセルの画像を作りだすカメラである。この数字は緻密さが必要な被写体やそのような表現を求める者には必ずしも十分でないと思う面もある。

デジタルカメラの解像度はどこまで必要か? それは何を撮影するのか、また何を求めるのかで決まる問いである。

私は風景撮影にこのカメラの画素数や画質が十分過ぎるとは思わない。モアレや偽色ももっと少なくして欲しい。これらは多くの制限を生む。しかしこれらマイナスの要因を差し引いても、この解像度はいろいろ撮影してみたくなる性能だと言える。写真の質というのは画素数や解像度が全てではないし、画質としても他の要求性能が沢山ある。

この次にくるものは何か? それはカメラとしてより多くの制限を取り払ったカメラである。

2003年7月24日 写真とその周辺/井口育紀

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