写真とその周辺

写真とその周辺/デジタルプリント出力の変褪色

ここで言うデジタルプリントとは、デジタル画像を出力するインクジェットプリンター、あるいは昇華型プリンターなどのプリント出力を意味する。 この数年のこれらコンシューマ向けプリンタの表現力向上は目覚ましく、限られた範囲ではあるが画質の点では満足なレベルに近づきつつある。

これらのプリンターを 写真プリントのための出力機としてみた場合、プリント画像を形成するプリント装置としての機械性能と、得られた結果 であるプリント出力そのものの性能が考えられる。 前者の装置としての性能は解像度(インク粒子の細かさ)に始まり、階調再現、色むら、色再現性、さらにプリント速度、インク・出力紙のコストコンピュータとの接続形態(パラレル、SCSI、USBなど)などである。

後者のプリント出力そのものの性能、 これは写真家にとってある意味では最も重要と思われることの一つである、についてはプリント装置本体よりも問題にされない場合が多いように思われる。 この性能はプリント画像の耐久性能であり、耐久性のない画像は時間とともに褪色が進むという問題である。 またこの画像の変褪色はプリントシステムによって異なってくる。    

過去に行った1つの実験と驚くべき結果

今から5年ほど前になると思うが、まだ現在のように安いインクジェットプリンターが十分普及していなかった頃、、、たまたま知人が持っていたカラー・インクジェットプリンターのプリント出力(カラー)を、画像の半分だけ黒紙で覆い、直射日光の当たる窓際において色の変化を見たところ、思っていたよりも結果 は悪く、わずか数日で色が変化し全体にくすみ、鮮やかさを失っていくのが確認された。

さらに驚くべき最近の出来事

その後各社からインクジェットプリンターの写 真画質性能のものが売り出され、またアルプス電気製の溶融熱転写のマイクロドライプリンターなどがかなり期待できる性能で普及が進んでいた今から1年程前、意外なことが起こった。

筆者の使用しているEPSON PM-2000インクジェットプリンターに、新しく販売が開始されたKonicaフォトライクQPペーパーを使用してプリントした時のことである。 プリント直後はまずまずの仕上がりで、このペーパーのインクストッパーの性能、即乾性能、プリント面 の白さなど、従来ペーパーからの改善に満足していたが、時間がたつにつれて意外なことに気付いた。 なんと、時間とともに画像全体が色褪せ全体が茶色っぽくなり、数日後にはかなりひどい状態となっていった。 この時使用したインクはEPSON純正品である。 またこの変褪色(?)は暗褪色、明褪色ともに起こっていき、インクのロット、ペーパーのロットに関係なく見られた。

上記に示す2つの経験からいえることは、インクジェットプリンターの出力画像は特に変褪色しやすいということである。 またインクとプリントペーパーの組合せについても十分確認テストする必要がある。 通 常のコンシュマー向けインクジェットプリンターに使用されているインクは基本的に褪色が考えられる染料系のインクであり、またプリントペーパーにはインクの滲み止め、受容層、あるいは表面 が白く滑らかになるように塗布されたコーティング層があり、これらとインクが交わることによる化学的安定性の問題を持つ可能性もあることである。

先の事例ほどではないが.........

上記と例ほど急速ではないが同様にEPSON純正フォト・プリント紙でも褪色が進む。 通 常光、通常の空気汚染の室内にて進行する。 一年もたてばかなり目立ってくる。 またフォト・プリント紙2ではやや改善されたか、比較的安心なレベルである。 またいずれのペーパーも除湿した暗所(ドライキャビネット内)ではより変化が少ない。

これはいける!?

上記の変褪色問題と同じ時期にやはり画質を確認を兼ねてFUJIFILMのSuper Photo Grade 光沢フィルムにかなりの枚数プリントを行い、現在でもそのプリントを室内の比較的空気の汚そうな場所に置いているが最近その画像を見ていて思った。 PM-2000でのインクジェットプリントであるがほとんど褪色が確認できない。 この1年少々では色褪せ感なしである。 このままあと何年維持できるのだろう? 10年もいければと思うが、何のデータもない。 

別の意味での驚くべきこと 

過去にプリントした数多くのインクジェットのプリントペーパーについて褪色とは違う気になる点が1とつある。 それは紙自信の変色である。 通 常A4サイズなりのペーパーにプリントした場合、画像はペーパー全体よりも少しかそれ以上小さくプリントする事になる(プリンタのもつプリント範囲の制約もあるが、)。 この時、この画像の無い、周辺の余白部分の変色が目立ってくることである。 このことは指でよく触る付近はやはり変色が進み、またタバコの煙に触れる部分は特に黄ばみが目立つ。 コーティング層がインクのみならす、これら空気の汚染までも受容してしまうためか? 通 常のコピー紙、上質紙あるいは熱転写プリントペーパーなどと比較しても明らかに変色しやすい。

以上、思いつくままに書いてきたが、現在のインクジェットプリント画像は褪色は避けられず意外に劣化の速度は速いと思われる。 インクとプリントペーパーの組合せ、湿度、温度、空気汚染などに注意し保管するしかない。 それによってその画像の劣化を遅らせることはできる。 しかしこれらの方法では手間がかかるだけでなく、十分でない。 もう少し画像の耐久性を高めた(せめて銀塩写 真並の)プリントシステムに期待したい。

1999年7月4日 写真とその周辺/井口育紀


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